サウナー2人が提案 ”サ活”は自宅でできる時代へ

[リノベエステイト]の松山氏は「サウナ・スパ プロフェッショナル」の有資格者で「週2、3回は通っている」サウナー。
今回は「メトス」の高森氏と、サウナの魅力、そして自宅サウナの将来性について考えた。

 

令和のサウナブームの背景ときっかけとは

 

世は空前のサウナブーム。まだサウナの魅力に気がついていない人でも、サウナを愛する人のことを「サウナー」、サウナ、水風呂、外気済という一遊のルーティンを経て、無の地に達することを「ととのう」と呼ぶことは、知っているだろう。

一般社田法人リノベーション協議会九州部会会長を務めるなど、もっぱらリノベ界で存在を放つ松山真介氏も、実は生枠のサウナー。サウナー歴は5年ほどになるという。きっかけは、サウナーの聖地と称される「湯らっくす」(熊本市)のリノベーションを手がけたこと。

 

「実は、それ以前まで全くいマっていなかったんですが、湯らっくすの西生社長とは長い付き合いで、2016年度の熊本大地震の後のリノベーションに関わらせていただきました。その後、西生社長と一緒に『一体サウナとは何なのか、僕たちなりの答えを探しに行こう』ということで、全国の有名なサウナ店を一緒に回ったんです。そこでハマっちゃったんですよね」と、肌艶のいい顔をさすりながら回想する。

 

株式会社アポロ計画 リノベエステイト 松山真介

 

「湯らっくす」が打ち出したメディテーションサウナは、”大量の発汗を促すためのもの”という印象が強かったサウナのイメージを、自分と向き合ったり、脳をリセットさせるものへと変革した。温浴事業を手がける老舗企業「メトス]の福岡営業所マネージャーの高森誠之さんは、「ちょうど同じ頃から、テレビで著名人がサウナ好きを公言し、『ロウリュ』という言葉が一般的に知られるようになりました。実際、弊社にも口ウリュを付けたいという要望が多く寄せられています。ロウリュの認知が広がったこと、備えている施設が増えたことがブームを後押ししていると思います」。

 

フィンランド発祥のサウナが日本の大衆浴場に登場したのは、1961年という説が有力。
1964年の東京五輪時にフィンランドチームがサウナを持ち込み、活躍したことが、全国区になるきっかけになった。昨年開催の東京五輪でも選手村にサウナが設置されており、その施工を担ったのが、高森さんが在籍する「株式会社メトス」だ。

 

株式会社メトス 福岡営業所マネージャー 高森誠之

 

「ただ、フィンランド流の楽しみ方が広まったのは、今回のサウナブームが初めてかもしれません」と高森氏。「当社が輸入・販売していたサウナは、昔からロウリュができました。しかし、利用者に知識がなかった昔は、水をどんどんかけることで機械が壊れていったんです。施設がロウリュを禁止していった結果、乾式サウナが主流になりました」と、日本のサウナ文化の系譜を語る。

 

松山氏も「サウナ好きになったのは、サウナ→水風呂→外気浴を数回繰り返すという正しいルーティンを知ってからです。ととのうと、疲労回復と当時に脳が活性化するので、外気浴中にアイデアが閃くことも多いと実感しています」と、正しい入り方によってハマったという。

 

 

コミュニティとプライベートが共存する場

発祥の地フィンランドでは、日本でいう銭湯のように、サウナが一つのコミュニケーションの場になっていると話す。実際にフィンランドでサウナ巡りをした松山氏は、「大使館や国会議事堂内、そしてサウナバスが走っていることに大変驚きました。人が集まるところにサウナありを実感しました」。

 

興奮状態とリラックス状態という相入れない状態が共存するサウナは、今後の日本でもコミュニケーションの場となっていくだろうと、2人の意見は一致する。その一方で、高森氏はこう話す。「メディテーションサウナという考え方が、ソロサウナの原点になり、今は個室のニーズも高まっています。実際に、個人宅にサウナを設置したいという相談も増えていますね。コロナ禍で自由にサウナに行けなくなり、自宅に作りたいと考える人も増えているという印象です」と、大衆の場で楽しむサウナと、個人で楽しむサウナ、それぞれに違うものを求める時代が来ていると分析している。

 

 

プライベートでサウナを設置するには

実際、自宅サウナは実現可能な選択肢なのか。高森氏は「諸費用を除けば、弊社の場合で一人用100万円台から購入できます。簡単な取り付け工事で設置できる据え置きタイプと、空間美を邪魔しない埋め込みタイプがあり、金額は据え置きタイプが安いですね。どちらもロウリュが楽しめるのがポイントです」。

 

自宅サウナ実例
「メトス」が実際に施工した自宅サウナの一例。壁に埋め込むタイプなら、部屋のようなしつらえになる。電気を使用し、100度まで設定できるという

 

集合住宅か戸建てかにより、設置できる条件は異なるそうだが、「最近のマンションや戸建てなら、問題なく付けられる場合がほとんどです。個人的には、安い車を買うのと同じ感覚で設置できるようになっていると感じます。ただ、サウナは水風呂と外気浴がセット。サウナは浴室の側に設置し、ベランダに外気浴のスペースを設けるのが理想です」と松山氏。

 

大掛かりな工事に踏み切れない人には、より手軽なテント型サウナという選択肢もある。庭に設置でき、使用しない時期は収納できるのが魅力。移動可能なので、設置と新の焚き付けが可能な屋外であれば、どこでも楽しむことができるのも注目されている理由だ。

 

 

松山氏は「一人でゆっくり楽しむ自宅サウナもいいですが、人を招いて、サウナでもてなすのもいいでしょう。サウナには2、3人がしっくりくる広さ、空間を大切にする心、ロウリュの作法など、茶室・茶道に通じるものがあるので、おもてなしのポテンシャルを持っている場です。大衆のサウナではもてなしや大事な話はできません。自宅に設置するに値する、十分な価値がありますね」。


(フクオカリノベ 2022 no.08 掲載)