古民家ホテルから学ぶ
“建築を受け継ぐ”ということ
戸建て
丁寧な暮らしを感じながら 日本人らしい心の洗濯を
「いつか絶対に取材してみたかったんだ」。マイクロツーリズムが注目を集めている今、プライベートで『HOTEL CULTIA 太宰府』を訪れたという松山真介氏はいう。古民家ならではの良さをそのまま残したその姿に感動したのだとか。出迎えてくれたのは、チーフの福田正一郎氏。「弊社(バリューマネジメント株式会社)は日本各地で数々の分散型古民家ホテルを手がけているのですが、一貫して、〝オーナー様の思いに寄り添う〟ことを大切にしています。歴史的建造物を後世に残していくことが第一。最低限の修繕しか行なっていないんです」。場所によっては隙間風や床の軋みなどが感じられるが、それも「日本人の丁寧な暮らしぶりがここに現れている」と松山氏はいう。例えば、床の軋み。これは、かつての住人だった絵師・吉嗣梅仙が、静寂の中に響くこの〝軋み音〟をも楽しみたいという思いから、このような設計にしているのだとか。「ここにくると日本人として魂からリセットされるような感覚になる」と松山氏がいうのもうなずける。
「建物を私物化しない」 未来のリノベーション
暮らすように泊まるということを、ひとつのコンセプトとして掲げているHOTELCULTIA太宰府。太宰府の街全体をホテルとして見立て、敢えてホテル内には土産物売り場や、コンビニのような売店を設けていない。「九州のブランド食材を中心に使った朝食や夕食を楽しんだ後は、ぜひ、外に出かけていただいて、お買い物や大宰府の食を楽しんでいただければと思っています」と福田氏。実際に滞在したという松山氏も、街に出て太宰府ならではの夜を楽しんだのだという。「建物を私物化せず、街を私物化する。そうすることで、逆に街からも開いてもらえているんだと思います。江戸時代から活躍していた絵師が丁寧に暮らした形跡が残るこの邸宅を、ぜひみなさんに体感してもらいたい、心からそう思います。テレビや時計、明るい照明がない、この演出も本当に素晴らしいですよね。非日常を味わえました」と松山氏。建物を私物化しないということ――これは今後の古民家リノベーションのひとつのキーワードになるのかもしれない。
リノベーションで 人生をより充実したものに
リノベーションをする際、ほとんどの人が「なるべく新しい物件を購入し、新築のように見せたい」そう考える。だけども、新たな価値観として松山氏が提案するのは〝リノベーションをゴールとして捉えるのではなく、人生をより豊かに充実させる手段として考える〟ということ。「ぼくたちの仕事は、施主様のご要望にお応えするということはもちろん、こういう古民家を後世に残していくということも、重要なミッションだと考えているんです。例えば、広い古民家を購入した時に、半分を民泊として活用してみてはどうでしょうか?日本各地にはたくさんの素晴らしい古民家が存在します。それを自分たちだけのものにしておくのはもったいない。だったら、建物を私物化せず、開けた場所にするというのもひとつの手だと思うんです」。
〝田舎暮らし〟や〝副業〟など、これまでとは違う様々なキーワードが飛び交うようになった昨今。これからの暮らし、人生を、リノベーションからスタートさせてみてはどうだろうか。
- 施工した工務店