築140年と創業100余年。世紀を超えた大仕事。
戸建て伝統の技を継承する
職人集団が結集
〝旧街道沿いの白壁のお屋敷〟。そんな呼び方がよく似合う。この建物は築140年、明治時代に建てられた名士の家屋だ。すべらかな漆喰の白壁、屋根には邪気を追い払う大きな鬼瓦、中に入れば吹き抜け天井を渡る巨大な梁に圧倒される。
何もかもが令和の今では規格外。当時の贅沢な材料を取り寄せ、匠たちがプライドをかけて造り上げたこの家屋には、明治期の日本建築の知恵と技が息づいている。福岡西方沖地震の際も、増築部分こそ壊れたものの、明治時代に建てた部分はびくともしなかったという。
「代々、神仏を奉ってきた大切な家の一部です。私たちはずっとここを守ることに専念してきたけれど、家族で話し合いをして気づきました。子や孫の代に受け渡すのならば、ただ守るだけではだめだ、と」。
古い家屋は歳月が建つほど維持管理が大変になる。遺すとしたら正しくメンテナンスをし、次の世代に受け渡す準備をする必要がある。
Nさんの想いに応えたのは江戸時代から黒田藩の大工棟梁をまとめてきた[桑野組]だ。家の長い将来を見据えて、まずは外装をきっちりと整備。傷んだ増築部分や古くなった屋根を解体し、躯体や屋根、外壁を補強して白壁の屋敷を復刻させた。釘を1本も使わずに、この家屋が建てられた頃とほぼ同じ意匠を再現できる会社は希少。現代の職人たちは力を合わせ、明治時代の職人の技術を継承したのだ。
「解体工事業者、瓦屋、漆喰職人、そして大工…皆さんの仕事が素晴らしく感心しました。桑野組さんがわが家にふさわしい職人さんを選び、職人さんたちも私たちの意見を汲んでくださった。おかげで工事もスピーディーに進みました。仕上がりにもとても満足しています」。
築140年の家屋を守り継ぐNさんと、会社を創業して100年以上になる[桑野組]。歴史ある意匠や技術の価値を熟知している両者だからこそ、伝統のバトンはつながれた。この家屋を大切に守り継いでいく家族の物語とともに。
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- 施主さんへのQ&A
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リノベーションしてよかったことは?
以前はすきま風が入り底冷えするような寒さを感じていましたが、リノベーションをしてからはかなり温かくなりました。
- リノベーション情報
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- 設計:桑野組
- 施工:桑野組
- 施工した工務店